路上のカバン
珍化 康
捨てられた町が
道の向こうに見える
赤く錆びて朽ちたサイン
風の足跡を告げてる
指を空に立てて
よぎる車を待てば
動くものはひとつもない
遠い雲の影以外に
風の歌が聞こえてる
土埃りを巻きあげて
足もとに置いた
破れかけたトランク
僕が運んでいるものを
僕のほかに誰も知らない
次の町に着けば
きついブーツを脱ごう
だけど朝になれば僕は
きっとその場所にいないだろう
風の歌が聞こえてる
なんにもないこの道に
風の歌が聞こえてる
土埃りを巻きあげて
風の歌が聞こえてる
なんにもないこの道に
風の歌が聞こえてる
風の歌が聞こえてる