ジャコビニ彗星の日
Yumi Matsutoya
夜の FM からニュースを流しながら
部屋の灯り消して
窓辺に椅子を運ぶ
小さなオペラグラス
じっとのぞいたけど
月をすべる雲と
柿の木ゆれてただけ
72年 10月9日
あなたの電話が少ないことに
慣れてく
私はひとりぼんやり待った
遠くよこぎる流星群
それはただどうでも
いいことだったのに
空に近い場所へでかけて
ゆきたかった
いつか手をひかれて
川原で見た花火
夢はつかの間だと
自分に言いきかせて
シベリアからも
見えなかったよと
よく朝弟が新聞ひろげつぶやく
淋しくなればまた来るかしら
光る尾をひく流星群