トマト
窓のむこうにはアメリカ橋と
ガーデンプレイスの灯りがみえる
"まるでマンハッタンだね‥‥"
あなたのジョークに
よろこびを感じてた
1DKの狭い部屋
何もないけれど幸福だった
私の手作りの 小さな食卓
トマト嫌いの子供みたいな
あなただけど 私は愛してた
明日を見ないで
あなたをみつめてた
恵比寿駅前で待ち合わせして
買い物するのがお決まりだった
"きっと回りの人は
若い夫婦だと思ってる"とふざけた
あなたを少し憎んでた
不確かだから幸福だった
あなたがすべてとは
言えなかったけど
大人になって振り返る時は
きっと言えるよ"
あなたを愛してた"
トマト嫌いの"あなたを愛してた"
残酷な季節の後で
あなたは部屋を出て行った
思い出のコートだけ残して
私は部屋の窓越しに
アメリカ橋に消えてゆく
青春のかけらだけみていた
山手線に乗り 渋谷に向かう
朝の太陽が私をてらす
恵比寿に近づく度 思わず振り向く
あの頃に2人して
暮らした2人のあの部屋
あなたも時々は思い出すかしら
傷つけ合いながら 暮らした頃を
じつは あなたにかくしてた秘密
私の好きなもの それはトマト
言えなかったけど
トマトが好きだった
不思議ね あれから
トマトが食べられなくて
好きなのに嫌いになった‥‥
好きなのに嫌いになった‥‥