ノンタイトル
Mafumafu
朝をこぼした木組みの隙間
風の抜け道 春色の空
君の寝言がつぶやくすべてで
今日が始まるみたいな
蜘蛛の巣張った戸棚を開けて
カビ生えかけのライ麦のパン
かばんに詰めてどこかへ行こうか
君の知らない街
道行くだけで台詞もなければ
撮り直しもないワンシーン
どのカメラにもこぼれた世界に
台本も監督も何もない
ただの居場所のひとつもない
それがボクの映画か
失ったものなんて数えなくていいよ
ボクら理由無しに生まれたノンタイトル
何も気にしないで泣きじゃくっていいよ
誰も君の声なんて聞いちゃいないさ
たまらず石を投げた湖面に
君は笑っておどけてみせる
例えば怪しい色した実を口にしても
誰も怒らないでしょ?
瓦礫の花を紡いだボートで
君とふたりの逃避行
ボクらを祝うケーキはないけど
ああ こんな果物ナイフで
そんな盗んだブーケも
君を飾れるんだなあ
エンディングは期待通りなんてあるわけないさ
泣いた2分ちょっと ゴミ捨て場のタイトル
明日灰になって吹き飛ばされようと
誰か泣いてくれるなんて思っちゃいないよ
ねえ どこか遠くへ逃げようよ
ここじゃないどこか遠くへ
もう広角のレンズにだって
映らないどこか遠くへ
そして最後に寝る前に
鳴りやまぬ銃の中で
君の両目に映りこんだ
それだけでいいなあ
君は泣かないで 泣かないでいいよ
終わり2分前のエンドロールにタイトル
それは誰一人も覚えていないような
きっと在り来たりだった物語
失ったものなんて数えなくていいよ
ボクは理由無しに生まれたノンタイトル
何も気にしないで泣きじゃくっていいよ
誰もボクのことなんて知りやしない
これは君とボクだけの
名もなきタイトル