化け猫
君を撫でて 顔を埋めて
不機嫌な面で睨まれたいな
路地裏に消えてく君の
二股のしっぽも愛おしい
僕のことをじっと見つめるのに
カメラを向けたら目を背けるの
烏の濡れ羽と同じ色
足音も立てず夜に溶けた
愛想のない君は化け猫
ガラスの瞳に赤い満月が映った
愛憎渦巻く街の路地裏で
取り殺されても構わないよ
振り返らない君の髪
夢中で追いかけて気づかぬ間に
路地裏 ねじれてくリビドー
迷い込んでしまってもう終い
僕は気づく 愛しい割れたしっぽに
いつの間に無数にのたうつ蛇
正しく汚れてく君を
あいも変わらないままに愛でた
愛想のない君は化け猫
揶揄うみたいに牙を見せて笑って
細胞ひとつさえ残らないように
食い殺されて終わりがいいな
寂しいと猫撫で声で鳴いて
承認と肉を狩る
満たされた後には
白い血と赤いミルクの海だけ
気まぐれに夜と戯れ
灰色の人の群れからはぐれ
誰にも懐かない君の大きなあくび
僕には眩しい
思わせぶりに笑って奪っていった全部
そうやって化かされた
愛想のない君は化け猫
ただの一度も飼い慣らせはしなくて
敗北者として君に隷したい
首輪をつけるのは僕の方だね
愛想のない君は化け猫
ガラスの瞳に赤い満月が映った
愛憎渦巻く街の路地裏で
取り殺されても構わないよ