夜とアドリブ
貴男 田島
始祖鳥の羽毛で飾りつけた女
シロサイの仮面をかぶった男が誘う
いにしえの呪文を唱えて飛び立った
メキシコの遺跡で
妖しく踊り明かすよ
魂がひとつ溶け合って
空に悲しく透明な
アドリブを利かせて
津波が押し寄せる
リュウグウノツカイと
蒼いシーラカンス
モーテルの壁から聞こえる魚の言葉
真夜中の縫い目が裂けた穴 くぐり
きょうもきみに逢える 光の速さで
ハネムーンに出よう
恵比寿から渋谷へ塗り絵して歩いた
きみの言いたいこと
いまはもう分かる気がする
東京上空を離れ
銀河系を離れて
遠く家を離れて
自分の名前も忘れ